細胞内酸素動態の解明

 細胞内の酸素動態を解明するため、リン光性色素を用いた細胞内酸素濃度イメージングと、測定に用いる新たな色素の開発を行っています。好気呼吸を行う生物では、主に細胞内のミトコンドリアで酸素を消費しながら、生体内のエネルギーであるATPを合成しています。右図のように生体内では血管から70 μm離れると酸素が供給されなくなり、その細胞は低酸素状態となっています。ある種の疾患はこの低酸素状態と深い関係があり、低酸素に関する多くの研究が行われています。また、低酸素状態はがん細胞とも大きく関係しています。がん細胞と腫瘍組織の中心部分は無酸素状態である、低酸素環境のがん細胞は難治療性であるなど、酸素とがん細胞は深い関係があると知られています。これらのことから、細胞の酸素動態を観測することは、疾患、がんの治療法開発などへの貢献が期待できます。

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細胞内酸素濃度イメージング

 細胞内では酸素濃度は均一ではなく分布があり、これを顕微鏡で直接イメージングする研究に取り組んでいます。白金イオンを含む色素を細胞内に取り込ませ、この色素からのリン光を検出することで酸素濃度イメージングを行っています。この色素は酸素の量に応答してリン光の寿命が変化するため、イメージング画像では酸素濃度が高いと赤色、低いと青色となるような疑似カラーで表示しています。その結果、一細胞内で酸素濃度の分布が観測できました。現在は、薬剤や低酸素などの刺激に応答した細胞内の酸素動態の解明に取り組んでいます。

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新規リン光性色素の開発

 現在利用している色素をさらに高機能化した新しい色素の開発に取り組んでいます。

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